パンフレットに掲載するプログラムノートを公開します。演奏とともにおたのしみください。
ルイ・ブルジョアの讃美歌による変奏曲
作曲 クロード・トーマス・スミス
ルイ・ブルジョワの讃美歌による変奏曲は、1973年にアメリカの作曲家クロード・トーマス・スミスが、アメリカ空軍士官学校バンドの委嘱によって作曲した吹奏楽作品です。
本作は、16世紀フランスの作曲家ルイ・ブルジョワによる讃美歌の旋律「Old Hundredth」を主題としています。この旋律は現在も讃美歌「All People That on Earth Do Dwell」などで広く親しまれているほか、吹奏楽作品では、D.マスランカの「交響曲第4番」にもモチーフとして採用されています。簡潔ながらも格調高い性格を備えた主題であることが特徴的です。
スミスはこの歴史的な旋律を基に、絢爛な序奏、荘厳なコラール、抒情的な独奏部や躍動感あふれる快速部と、次々に変奏を展開し、華々しいクライマックスへと導きました。原旋律への敬意を持ちつつ、現代的な和声と吹奏楽の
持つ多種多様な音色によってモチーフが彩られている点が大きな魅力です。姿、形を変えて様々な顔を見せるモチーフの変遷とともに、トランペットをはじめとする難易度の高い独奏にもご注目下さい。
エルサレム讃歌
作曲 アルフレッド・リード
吹奏楽界の巨匠アルフレッド・リードによる作品。本作は「アルメニア復活祭聖歌による変奏」という副題が付され、7世紀に遡る旋律に基づいて作曲されています。この旋律はアルメニアの偉大な音楽学者コミタスによって採譜されたものです。コミタスは聖歌のみならず数多くの民謡を蒐集しており、それらを素材とした作品が、リードの代表作「アルメニアン・ダンス」です。民謡を素材とした「アルメニアン・ダンス」に比べ、本作「エルサレム讃歌」は、復
活祭の聖歌を基にしており、より内省的でストイックな性格を備えています。
楽曲は、序奏、主題と五つの変奏、そして終結部から成ります。序奏では、最も偉大な奇跡―キリストの復活―を描き出します。閉ざされていた墓が開かれ、その前に大地が震えるという劇的な情景が、荘厳な響きのうちに提示され、各変奏では異なる書法と色彩によって主題が展開されます。フィナーレでは、再び復活の喜びへと帰着し、主題が壮麗に再現されます。その響きは、あたかも天上のラッパが復活の歓喜を世界へ告げ知らせているかのようです。吹奏楽特有の重厚な響きを存分に生かし、その編成の魅力を余すところなく引き出した作品です。
魔法にかけられて
作曲 アラン・メンケン
編曲 鈴木 英史
ディズニー映画「魔法にかけられて」は、おとぎの国アンダレーシアから現代ニューヨークへ突然迷い込むプリンセスの物語です。曲中の随所には、白雪姫やシンデレラ、美女と野獣、リトルマーメイドなど過去のディズニー作品へのオマージュが見られます。本作の主眼である伝統的なディズニーアニメーションと現代的な実写映像が融合された世界観を、クラシックとポップスの融合といった音楽からも味わうことができます。
オペラ座の怪人
作曲 アンドリュー・ロイド・ウェバー
編曲 建部 知弘
「オペラ座の怪人」は巨匠アンドリュー・ロイド・ウェバー作曲によるミュージカル音楽の最高傑作です。 本メドレーは廃墟の劇場を舞台に巨大なシャンデリアが現れ、物語の世界に惹きこまれる「Prologue」で幕を開けます。怪人との運命の邂逅「Angel of Music」、支配人への脅迫状が舞う「Notes」、華麗な仮面舞踏会「Masquerade」、クリスティーヌの才能が開花する「Think of Me」、父の墓前へ救いを求めに向かう「Journey to the Cemetery」、ラウルとの愛を誓う「All I Ask of You」へと展開します。 怪人の執念と叶わぬ愛、劇的な物語がウェバーの名旋律と共に見事に紡がれます。
「もののけ姫」セレクション
作曲 久石 譲
編曲 森田 一浩
1997年に公開され、日本映画の記録を塗り替えた宮崎駿監督の不朽の名作「もののけ姫」。自然と人間の共存という重厚なテーマは、今なお色褪せることがありません。 物語の幕開けを告げる壮大な「アシタカせっ記」から始まり、中盤では荒ぶる神の怒りと恐怖を描写した「タタリ神」が緊迫感たっぷりに展開されます。そして最後は、抒情的で美しい旋律が印象的な「アシタカとサン」へ。久石譲が描いたドラマチックな旋律と、森田一浩が再構築した吹奏楽の豊かな響きを存分にご堪能ください。
カム・サンデイ
作曲 オマール・トーマス
20世紀後半以降、アメリカの吹奏楽界では、クラシックの形式美を基盤としながら、ジャズやゴスペル、R&B、映画音楽など多様なポピュラー音楽の語法を積極的に取り込む潮流が広がってきました。いわゆる「シンフォニック・ポップス」と呼ばれるこの流れは、躍動的なリズムと色彩豊かなオーケストレーションを兼ね備える点に特色があります。「Blue Shades」を作曲したフランク・ティケリや、「Aurora Awakes」を作曲したジョン・マッキーらは、その代表的存在として現代アメリカ吹奏楽の響きを方向づけてきました。
本作を作曲したオマール・トーマス(1979-)はヒューストン出身の作曲家・教育者であり、ジャズの伝統から強い影響を受けながら、吹奏楽や大編成アンサンブルに新たな感性を融合させた作品を数多く生み出しています。彼の作品は、ジャズやゴスペル、R&Bといったアフリカ系アメリカ人の音楽文化(いわゆるブラックミュージック)を基盤としつつ、黒人アメリカ人の歴史や文化、現代社会における多様性といったテーマを音楽に反映させてい
る点に大きな特徴があります。
「Come Sunday」は、黒人教会の礼拝を題材とした二楽章構成の作品であり、礼拝において中心的役割を担うハモンドオルガンへのオマージュとして書かれました。ハモンドオルガンは1930年代に開発された電気式オルガンで、回転スピーカー(レスリー・スピーカー)による独特の揺らぎある音色を特徴とし、ゴスペル音楽において象徴的な存在となってきました。本作は、その響きを吹奏楽によって再構築する試みでもあります。
第1楽章「Testimony(信仰告白)」は、礼拝の始まりを描いています。静かな和声の上に旋律がゆったりと立ち上がり、まるで会衆が心を整え、神への思いを語り始めるかのように音楽が広がっていきます。ブルース由来の和声進行や柔らかなシンコペーションが織り込まれ、木管群の温かい響きが空間を包み込みます。やがて音楽は少しずつ熱を帯び、金管が加わること
で確かな高揚感が生まれますが、その中心にあるのはあくまで静かな祈りの心です。内に秘めた祈りと希望が、穏やかな光のように差し込む楽章となっています。
続く第2楽章「Shout!(歓喜の叫び)」は、礼拝のクライマックスを象徴しています。リズムは一気に躍動し、シンコペーションやコール&レスポンスが次々と現れます。金管群の力強いフレーズ、打楽器の鋭いアクセントが交錯し、会衆が立ち上がり、身体全体で喜びを表現するかのようなエネルギーが解き放たれます。重厚なハーモニーと推進力のあるリズムが融合し、音楽は圧倒的な高揚へと向かいます。祈りから歓喜へ――精神的な解放の瞬間を、吹奏楽ならではの迫力と色彩で鮮やかに描き出す作品です。

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