2024年3月6日水曜日

第21回定期演奏会 曲紹介~交響曲第九番(作品160)~

 さて今回は、2024年3月9日(土)に開催されるまちかね山吹奏楽団第21回定期演奏会の曲紹介第2回として、第二部にて演奏いたします、交響曲第九番(作曲:ジェイムズ・チャールズ・バーンズ)をご紹介します。





曲紹介の前に・・・

演奏会当日、第一部にてゲストとしてお呼びする酒井格先生、小野川昭博先生に、みなさまの質問をもとにトークを繰り広げていただくコーナー、

題して「おまちかね!LIVEトークセッション」

を企画しております。

先生方にお聞きしたいあんなことやこんなことがある方はぜひご来場のうえ、質問をお寄せください!

当団団長は「お仕事がお休みの日の過ごし方とか聞いてみたいな~」などと申しておりました😂

 

 

さて、今回の曲紹介はやや長尺となります。あたたかい飲み物などをお供にごゆるりとお読みくださいませ🍵

 

【作曲者:ジェイムス・チャールズ・バーンズのプロフィール】

ジェイムス・チャールズ・バーンズ(1949~)はアメリカで主に吹奏楽作品を書き続けてきた作曲家です。

カンザス大学バンドで27年間指導を務めたのち、理論と作曲の教鞭をとりました。10年間、学部長を務め、2015年に名誉教授となっています。その間、ヨーロッパ、オーストラリア、シンガポール、韓国、台湾、日本など、各国の楽団から客演指揮者として招かれています。

日本では1980年代前半に「祈りとトッカータ」や「アルヴァマー序曲」、「アパラチアン序曲」などが紹介されました。これらの作品は当時の中高生の心をぐっとつかみ、それ以来およそ30年間、幅広い世代に愛され続けています。この間、プロの吹奏楽団が作品集を制作したり、二つの交響曲が世界初演されたりと日本の吹奏楽シーンにはなくてはならない作曲家の一人といえます。

当団でも過去に「交響的序曲」や「交響曲第三番『悲劇的』」、「交響的葬送曲(交響曲第七番)」などを演奏しています。

 

 

 【作曲経緯】

今回の定期演奏会にて演奏いたします「交響曲第九番」は、バーンズの70歳の記念にアメリカ国内の24の吹奏楽団や協会、個人の協同委嘱で、2018年1月から6月下旬にかけて作曲され、同年9月21日にポール・ポピエル指揮カンザス大学ウィンドアンサンブルによって初演されました。

 この初演はYouTubeにて視聴することができます。贅沢ですね。

https://m.youtube.com/watch?v=Q93iscOuCEM


【バーンズはかく語りき ~交響曲への想い~】 

バーンズはこの作品と自らの八つの交響曲について、以下のように述べています。

 

交響曲というのは単に大規模で長ければよいというものではなく、構成がしっかりしている必要があります。ハイドンやモーツァルト、ベートーヴェン、メンデルスゾーン、チャイコフスキー、ブラームス、マーラー、シベリウス、ショスタコーヴィチ、ストラヴィンスキー、コープランド、パーシケッティ、ウィリアム・シューマン、そしてコリリアーノに至るまで、みんな素晴らしい形式の伝統にしたがっています。作品の中で少なくとも一つの楽章はソナタ形式である必要があります。そうでない作品は交響曲でなく「交響組曲」と呼ばれるべきです。これが、ホルストの惑星やリムスキー=コルサコフのシェエラザードが交響組曲と呼ばれるゆえんです。

交響曲をなす楽章の数には規則はありません。マーラーの交響曲には5楽章構成のものがありますし、バーバーの最初の交響曲は一つの楽章で作曲されています。作曲家にとって、交響曲の形式の魅力は、古典派の時代にソナタ形式が完成されてからも絶えず柔軟性を持ち続けているところにあります。

交響曲の形式の美しさは、その果てしない広がりにあります。小説が作家のためにあるのと同じように、交響曲は作曲家のためにあるのです。交響曲は、作曲家に様々な気分を表現する時間と空間を与えてくれます。劇的な瞬間、悲劇的なエピソード、感動的な表現、そしてちょっとしたユーモアさえも素晴らしい形式の中に取り込んで、一つの音楽として構築するための時間と空間をしっかりと確保してくれるのです。

この作品は私の最後の交響曲です。交響曲は9曲で十分です。私が現代の吹奏楽という新しく素晴らしい合奏形態のために作曲してきた50年にも及ぶ研究成果のすべてがこの作品には含まれています。

  

また、別の場所で以下のようにも語っています。

 

皆さんは私たち作曲家がページの左上隅から始めて、最初の小節から順にすべての音楽を書いているのだと思いがちですが、それは誤解です。当然、普通はこうはいきません。たとえば、「交響曲第九番」の場合、最初に第二楽章を書き、次に第三楽章の一部をスケッチしてから第一楽章に移りました。そして、フィナーレは最後に書きましたが、冒頭を書く前に終わりを書きました。そうすることで、自分がどこに向かっているのかが分かりました。

もう一つの誤解は曲作りの際は何でもかんでもインスピレーションをもとにしていると思われてしまうことです。本当にインスピレーションが舞い降りてくる瞬間があるとすれば、その時までに書き溜めたテーマやアイデアに対して、思いつく限りすべての可能性をあてはめながら熟考している間だけです。曲作りでは必ずどこかの段階に熟考の期間があり、そこでは編成や中心音(調性の主音や調性がない場合は曲中で軸に据える音)、楽章の数などを決定します。

ロンドやソナタなどの古典的な形式を用いると、交響曲のような大規模な作品を書く時であっても、作業がしやすくなるということも利点です。大規模になるととても長い期間がかかってしまいます。そのような場合でも、全体の中のどこの作業をしているのか把握できるので、毎日作業する中で「順不同」で作業をすることができます。行きづまったときは別の部分の作業に移動することだってできるのです。

 

バーンズがライフワークとして吹奏楽の新たな可能性を拓く作品に、真摯に向かい続けてきたことを読み取ることができると思います。本作品はそんな職人が渾身の力を込めて書いた最後の交響曲であり、壮大な建造物でもあります。

 

 

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ここでひといき💨

バーンズ クイズ の時間です!

★バーンズの曲とそのイメージを結んでみてね★





文字が読みづらくてすみません。

カードは上から

交響曲第三番、交響的序曲、パガニーニの主題による幻想変奏曲、アルヴァマー序曲

です。



正解は・・・



交響曲第三番 作品89

1997年に大阪市音楽団(当時)によって初演された。いつのころからか海外では「悲劇的」という副題までつけられている。娘をなくした悲しみと息子を授かった喜びといった、人生の喜怒哀楽に全世界が涙した傑作。(第二回定期演奏会で演奏) 


 交響的序曲 作品80 

1991年にアメリカ空軍ワシントンDCによって初演された。ロマン派的な音楽という注文、実は結構ハードルが高かったらしく、締め切りギリギリで一気に書き上げた。金管8声によるゴージャスすぎるファンファーレ、ホルンの高音など、やりたい放題やっているアグレッシブな序曲。(第六回定期演奏会で演奏) 


 アルヴァマー序曲 

1981年にカンザス州ウィチタ地区中学校選抜バンドによって初演された。ゴルフ場の名前から命名されたことは有名。Pokémon Presents 2022.08.03で使われた際に、吹奏楽界隈がざわついた名作。 


 パガニーニの主題による幻想変奏曲 

1988年にアメリカ海兵隊バンドによって初演された。全パートがパートごとのアンサンブルをリレーしていく曲と書けば「アンサンブル大会楽しそう!」となりそうなのに、なぜか神妙な気分になってしまうのはあの旋律のせい。(第四回定期演奏会で演奏)

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さて、ひといきつけましたでしょうか?

ここからは、交響曲第九番に戻りまして、それぞれの楽章についてご紹介いたします。

 

●第一楽章 エレジー

エレジーとは日本語では哀歌といい、悲劇的な雰囲気を直接的に表現するために短調(第一主題はト短調)で書かれています。また、バーンズ自身が大変こだわるソナタ形式で書かれています。ソナタ形式は大きく分けて提示部A-展開部B-再現部A’からなる形式で、三部形式の一種と考えることができます。その上で、提示部には第一主題と第二主題の二つの主題を含み、第二主題は第一主題に関係のある調で書くことがルールとなっています。本作では第一主題をトランペットが、第二主題をオーボエ三重奏が示します。そして、第一主題がト短調であるのに対し、第二主題は下属調であるハ短調で書かれています。

展開部は提示部で提示した二つの主題を変奏するなどして、関連を持たせながら作曲家が腕を振るう部分です。本作では展開部はテンポを明確に上げ、第一主題は主にリズムの変奏、第二主題は対位法的な変奏とそのキャラクターを色濃く対比させながら、緊張感を高めて音楽は展開していきます。

 

●第二楽章 ワルツ

Quasi una valseと記された第二楽章は、バーンズこの交響曲の中で最初に手を付けた楽章です。「私はいつもワルツを書きたかった。」、「ディナーのメインコースの間に出されるレモンシャーベットのようなもので、さっぱり明るい雰囲気をもたらす。」とバーンズは述べます。ロンド形式で書かれており、ここでもバーンズが非常に形式にこだわったことがわかります。

 

ワルツは円舞曲ともいわれる舞曲の一種で、世界的に広まったのは19世紀のことです。シュトラウス一家が音楽作品としてのワルツを山のように書きあげ、BGMではなく純粋な音楽作品としてのワルツが流行りました。一方で吹奏楽はというと、まだサクソフォンは発明されておらず、トランペットにはピストンがついていない、そんな時代です。世の中の作曲家は管弦楽やピアノでワルツを書くしかなかった時代といえるかもしれません。それから2世紀がたち、現代の管楽器の機能や奏法を熟知した作曲家による古典的な形式と最先端の音響を合わせ持った、唯一無二のワルツがここに体現されています。

 


●第三楽章:ナイト・ソング

Largo misterioso(幅広く、神秘的な)と記された緩徐楽章。東洋風でエキゾチックな旋律がアルトフルートによって示されて始まります。バーンズ自身、「祈りとトッカータ」、「ペーガン・ダンス(異教徒の踊り)」、「トーチ・ダンス(たいまつの踊り)」といった、エキゾチックで、時にはプリミティブな雰囲気をまとった作品をいくつも残しており、そのような作品の雰囲気を思い起こさせてくれます。また、ハープやヴィブラフォンのトレモロを駆使して作り出される幽玄的な音響は、「交響曲第四番」の冒頭を彷彿とさせます。中間部の長い息遣いの緊張感の作り方は「交響曲第三番」の一楽章にもどこか通じるところがあります。

曲の後半ではステージ裏からソプラノ独唱によるスキャット(歌詞のない歌)が聞こえてきます。吹奏楽とソプラノの融合についても「ロンリー・ビーチ(ノルマンディ、1944)」で取り入れた手法です。このようにバーンズがこれまでに用いてきた前衛的な作曲技法が交響曲の構成の一部となって有機的に組み合わせられています。

今回の演奏会では、ソプラノ独唱として古瀬まきを先生をゲストにお招きしています。

 

●第四楽章:フィナーレ

Allergo Vivo(快速で、生き生きとした)と記された長調の最終楽章。冒頭のゴージャスな響きこそいわゆる「バーンズ・オーバチュア」と呼ばれるA-B-(A+B)の複合的な三部形式の序曲を彷彿とさせます。事実、この曲は6/8拍子で書かれる快活な主題と2/4で書かれるコラール風の主題の二つが柱となって展開されます。特に中間部は非常に薄いオーケストレーションで徹底されており、各楽器やセクションの持つ特性やバンドメンバーのヴィルトゥオーソ性に迫る「パガニーニの主題による変奏曲」の要素も多分に含まれています。途中にカデンツァが仕込まれていたり、ブリッジ部分が別の旋法による素材で書かれていたりと、いつもより多めに仕掛けが施されてはいますが、最後は聴衆や奏者の期待に応えるかのように、一楽章と同主調であるト長調に向かって音楽は突き進み、お約束かとも思える大団円を迎えます。この最後の爽快感を伴う充実感は、彼が50年間、芸術家でありながら音楽教育という側面を大切にし、彼が生み出す音楽が長年にわたって多くの吹奏楽奏者に愛されてきたことの証でもあります。

 

 

 

 

ここまでたどり着いてくださった方に感謝申し上げます。

みなさまに「交響曲第九番」や前回ご紹介した「華麗なる舞曲」、そして酒井格先生作曲の「メルヘン」をはじめとした今年度の全日本吹奏楽コンクール課題曲を聴いていただけることを団員一同非常に楽しみにしております。

 

まちかね山吹奏楽団第21回定期演奏会は、3月9日(土)豊中市立文化芸術センターにて開催いたします。17時開場、18時開演です。開演前にはクラリネット四重奏による幕前アンサンブルもお聴きいただけます。

 

以下のリンクから来場予約できますので、まだ登録がお済みでない方はぜひご登録のうえ、ご来場ください。

まちかね山吹奏楽団 第21回定期演奏会 整理券申込み (form-mailer.jp)

 

みなさまのご来場を心よりお待ちしております🏔


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